2018-01-31

企業調整池を活用した市民参加型生態系ネットワーク形成


はじめに

 本事業は、尾張西部地域において「生態系ネットワークの形成(生き物の生息生育空間を適正に配置し、

つながりを確保すること)」を推進するとともに、本地域で活動する団体の取組を有機的につなげ、

将来にわたって生物多様性の確保に寄与する。

また、低平地特有の生態系の代償地を企業調整池に位置付け、生物の避難場所・ジーンバンクとしての

活用方法と市民参加型による生態系ネットワーク形成システムを構築する。

活動状況

〇豊田合成平和町工場内、調整池の現地確認

 調整池内の植生は、在来種のオギ群落が点在しており、大部分が外来種のメリケンカルカヤで覆われていた。隣接する沈砂池は、ヨシ群落で覆われていたが、セイタカアワダチソウも確認されている。また、ヨシの経年の枯死・堆積により本来の貯水機能が損なわれているものと考えられる。

 よって、調整池内外来種駆除および一部試掘計画を策定し、調整池内の植生の変遷をモニタリングする事とした。

〇調整池内外来種駆除および一部掘削計画概要

 豊田合成では、独自に外来種(メリケンカルカヤ等)刈り取り、表土50mmのすき取りによる駆除の実施、および一部を試験的に掘削し植生のモニタリングを検討する事とした。なお、すき取りおよび試験掘削による発生土は、今後の事業活動で有効利用すべく調整池内に仮置きとする。

〇豊田合成平和町工場内、調整池の現地確認

 外来種の刈り取りと表土50mmのすき取り、および発生土の仮置き完了。

 調整池内に繁茂していた外来種の刈り取りと表土50mmのすき取りにより、ほぼ全てが駆除された。今後は、表土すき取り部のモニタリングを行い、オギ群落の変遷や外来種の再繁殖防止対策(在来種の種子散布)が検討課題となる。 また、調整池内の一部の試験掘削について検討したが、沈砂池における流入出部の状況が明らかとなり、水環境域(水路等)の創出が可能であると判断されたため、沈砂池の貯水機能の回復に向けた浚渫計画策定へとシフトする事となった。

〇豊田合成立案の貯水機能回復に向けた沈砂池浚渫計画概要

・浚渫箇所としては、重機による掘削可能な作業範囲を考慮し、西側ブロック張りの底部基礎より幅2m、深さ50cm、延長66mとして、直線的な掘削を実施し、流路を確保するものであった。南側についても同様に、幅1m、掘削深さ50cm、延長11mとした。

・付帯工事として、調整池と工場の森の間で、生き物が移動できるよう緑の回廊(インセクトパス)を造成し、平和町工場内の多様性を高める。

〇協議会による沈砂池浚渫計画 第1回変更概要

 ①掘削(浚渫)部については、ヨシ群落が形成されている箇所と、枯死している箇所が見受けられた。ヨシの生態を鑑み、枯死した箇所は、浸水部(流路)になっていると考えられる。また、生物多様性を高められるよう、自然的(蛇行)な流路線形やワンドを設けることで、流水部と滞留部の形成が可能になる。よって、下記の通り浚渫位置を変更した。(※なお、掘削(浚渫)土量が同程度となるよう、流路幅を1.5mと設定)

 中央部に流路を設けることで、日照による変化が生じ(日陰による直射日光の軽減)、環境の多様性を創出できる。また、流路断面を傾斜にすることで、生き物の移動経路と連続性が確保できる。

〇協議会による沈砂池浚渫計画 第2回変更概要

 流路の一部に多様な植生環境を創造し、モニタリングを実施することで、将来的にどのような種が誘致可能かを検討するため、下記の通り施工する事となった。

〇豊田合成平和町工場内、調整池の現地確認

 当日は、雨天であり降水量は少ないものの、調整池全体の排水性が乏しく(水はけが悪く)、ブロック張り下部の基礎天端まで、水位が上昇していた。

〇協議会による沈砂池浚渫計画 第3回変更概要

 流路掘削(浚渫)開始時は、晴天であり調整池も十分乾燥していた状態だったので、掘削深GL-500mmに対し、水深が250mm程度であった。

 しかしながら、平成29年5月25日では雨天により、水位がブロック張り下部の基礎天端まで、水位が450mm上昇しており、水深が700mmとなった。

 通常時水深を250mmと仮定して設計された計画のまま施工を実施した場合、全てのエリアが浸水部となってしまう(当初計画参考)。

 また、“一時的”な「かく乱」という考え方もできるが、排水性が乏しいため“一時的”が数日または数週間単位に及ぶ可能性も考えられた。仮に、浸水が長期化した場合、乾燥地の植生が枯死する可能性も考えられるため、雨天等に対応できるよう、下記の通り地盤高を変更した(変更計画参照)。

〇豊田合成平和町工場内、調整池の現地確認

 流路の掘削(浚渫)は完了しており、植生モニタリングエリアの造成、およびふとん籠の復旧を実施。

調整池 沈砂池(蛇行水路)の推移

①H29年5月(覆いつくされていたヨシを刈る)

平成29年5月末

直線流路を蛇行に変更することを提案し実施

あわせて試験施工(ワンド・植生ゾーン)を行なう

平成29年7月初

平成29年9月末

近隣及び蛇行水路内の調査

①平成29年5月12日 現状調査

②平成29年7月 7日 第1回調査 豊田合成南側開発予定地および調整池(蛇行水路造成後)

③平成29年9月28日 第2回調査 豊田合成南側開発予定地および調整池(蛇行水路造成後)

確認された生き物の紹介

(※五十音順)

☆鳥類9種・・・

(在来種)カワウ、キジバト、ケリ、コチドリ、スズメ、ハクセキレイ、ヒヨドリ、モズ

(外来種)無し

☆両生類4種・・・

(在来種)アマガエル、トノサマガエル ナゴヤダルマガエル、ヌマガエル

(外来種)無し

☆昆虫類28種・・・

(在来種)アオスジアゲハ、アオモンイトトンボ、アシナガバチsp、アメンボ、ウスバキトンボ、ウラギンシジミ、エンマコオロギ、オオスカシバ、カゲロウsp、カナブン、カネタタキ、キアゲハ、キタキチョウ、ギンヤンマ、コミズムシ、シオカラトンボ、ショウリョウバッタ、ツマグロヒョウモン、ナガサキアゲハ、ナミアゲハ、ハシリグモ、ヒメガムシ、ベニシジミ、マツモムシ、ミズカマキリ、モンシロチョウ

(外来種)アオマツムシ (不明)ヨコエビsp

☆魚類7種・・・

(在来種)ギンブナ、クロダハゼ類、ドジョウ、ナマズ、 ミナミメダカ、モツゴ

(外来種)タイリクバラタナゴ

 

☆甲殻類3種・・・

(在来種)スジエビ、ヌマエビ

(外来種)アメリカザリガニ

☆草本類76種・・・

(在来種)アオスゲ、アゼガヤ、アゼナルコ、イガカヤツリ、イヌタデ、イヌホオズキsp、イボクサ、オオイヌタデ、オギ、ガマ、カヤツリグサ、ギシギシ、キュウリグサ、キンエノコロ、コスズメガヤ、コナスビ、スイバ、スカシタゴボウ、スギナ、スズメノカタビラ、スミレ属、タマガヤツリ、チガヤ、チチコグサ、チドメグサ、ツユクサ、テンツキ、トキワハゼ、ニガナ、ニセホソバニガナ、ヌカキビ、ノシバ、ノチドメ、ノミノツヅリ、ハハコグサ、ヒデリコ、ヒメガマ、ヒメクグ、ヒメチドメ、メヒシバ、ヤナギタデ、ヤハズソウ、ヨシ、ヨモギ、在来タンポポ

 

(外来種)アメリカセンダングサ、アメリカフウロ、アレチヌスビトハギ、アレチハナガサ、ウキアゼナ、オオオナモミ、オオクサキビ、オッタチカタバミ、オランダミミナグサ、コセンダングサ、コニシキソウ、コメツブツメクサ、シマスズメノヒエ、セイタカアワダチソウ、タケトアゼナ、タチイヌノフグリ、タチスズメノヒエ、チチコグサモドキ、ナガバギシギシ、ヌカススキ、ノボロギク、ヒメコバンソウ、ヒメジョオン、ヒメムカシヨモギ、ヒレタゴボウ、ホソバヒメミソハギ、マツバウンラン、ミチタネツケバナ、メリケンガヤツリ、メリケンカルカヤ、外来タンポポ

☆木本類5種・・・

(在来種)アオツヅラフジ、アカメガシワ、エノキ、コムラサキ

(外来種)ナンキンハゼ

【H30年 計画について】

調査結果を元に11/28現地ワークショップを実施し、参加者の皆さんの意見を頂いた上で 次年度の造成計画を作成しました。

来年度以降、地域の企業緑地を活用した生態系ネットワーク形成に期待が膨らみます。